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COLUMN
お役立ちコラム
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2024年7月、東京都中央区日本橋人形町に開院した日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックは、医師1名体制、地域における認知度ゼロという状況からのスタートだった。大都心にありながら江戸情緒を残す日本橋・人形町は、ビジネス街としての顔も併せ持つエリアである。東京都心という立地である以上、内視鏡クリニックの絶対数は少なくない。そうした環境の中にあっても、同院は開業後1年で内視鏡検査件数5,000件という実績を達成した。
本セミナーでは、同院院長の石岡充彬先生が、開業前から現在に至るまでの取り組みを実際のデータとともに提示し、その実績を上げた要因をWEB戦略の観点から解説した。ホームページを患者との最初の接点と位置づけ、開業前・開業直後・成長期という各フェーズに応じて役割を変化させながら成長させていく、という一貫した設計思想に基づくものであり、示唆に富む知見が数多く示された。本稿では、その要点を整理して報告する。
目次
石岡先生がまず提示したのは、患者の来院経路である。同院における主な経路は「ホームページ」と「紹介」の2つに大別される。知人や医療機関からの紹介による受診は、すでに一定の信頼を得た状態での来院となる一方、インターネット検索を経由する患者は、検索結果に並ぶ複数のクリニックのホームページを比較検討したうえで受診先を決定する。
比較検討の過程で重要となる指標がコンバージョン率(CVR)、すなわちホームページ訪問者のうち予約に至った者の割合である。以下の2つのケースを比較すると、単純な流入数の多寡ではなく、CVRを高めることの重要性がわかる。
| ケース | 訪問者数 | 予約数 | CVR |
| ケースA | 100人 | 1人 | 1% |
| ケースB | 50人 | 25人 | 50% |
CVRで比較すると、ケースBはケースAの50倍の効果に相当する。こうした差を踏まえ石岡先生は、予約導線を含めたホームページ全体の設計を通じてCVRを高めることが、集患力を左右すると指摘した。
患者の受診行動には、大きく2つのパターンがあるという。一つは、居住地や勤務地の周辺など、日常の生活圏内で医療機関を探すパターン。もう一つは、内視鏡検査のように受診頻度の低い専門的な検査において、生活圏をやや超えてでも、評判の良い医師を求めたり、専門性が高そうな医療機関を選択するパターンである。
いずれの場合も、患者は検索結果に並んだ複数の医療機関を比較検討したうえで、受診先を決定する。したがって、医療機関側が行うべきことは極めてシンプルである。患者がこのいずれかの検索行動をとったときに、比較対象として表示された競合の医療機関に勝つこと、それに尽きるという。
また、都心部における競合や商圏を考える際、物理的な直線距離を重視するのは、多くの医師が陥りがちな誤解であると指摘。直線距離は見るべきポイントではないという。同院の場合、最寄り路線である日比谷線の沿線上にあるかどうかを実質的な商圏として規定しており、そこから外れたJR駅の周辺や他の路線を利用する患者は、地図上の距離が近くても生活圏が交わらないため、受診対象とは捉えていない。一方、複数駅離れていても同一路線でアクセス可能な患者は潜在的な対象となる。実際に、同院には近隣だけでなく埼玉県・千葉県方面からの来院もみられるという。こうした患者層に対しては、ブランド力という点から東京・中央区というエリア特性は受診先選択において一定の訴求力を持つ。したがって、都心では近隣のクリニックと患者を奪い合うのではなく、自院の路線上にいる患者にどのようにアプローチするかを考えることが重要であると説明した。
あわせて、「競合の少ないエリアを選んで開業する」という発想についても再考を促した。内視鏡クリニックの開設が相次ぐ現状においては、競合が存在しないエリアはそもそも需要に乏しいか、いずれ競合が参入する可能性が高い。したがって、競合を避けて開業場所を選ぶのではなく、近隣の医療機関と横並びで比較された場合にも選ばれる強さを備えることが重要である。そうした訴求力をホームページ上に構築できなければ、いずれ競合が現れた際に患者から選ばれ続けることは難しいとの考えが示された。
続いて、開業初期に重視したWEB施策として、次の3点が挙げられた。
開業前のSEO対策――出遅れを「情報の質」で補う
一般に、SEO(検索エンジン最適化)による評価はホームページ公開後ただちに得られるものではなく、検索エンジンによる評価が定まるまでに一定の期間を要する。そのため、本来は開業の半年程度前にホームページを公開しておくことが望ましいとされる。しかし同院の場合、開業決定からオープンまでの準備期間が短く、ホームページの公開は開業のわずか3カ月前となった。SEOの観点からは、決して有利な条件でのスタートではない。
この時間的な不利を補うため、コンテンツの質による差別化を選択した。具体的には、共起語・関連語と呼ばれる、主要キーワードと一緒に検索される関連性の高い語句を外部ツールで分析し、文章に反映した。また、サイト内の全文章を石岡先生自身で執筆し、疾患に対する医学的知見や診療方針を反映して一次情報を充実させた。さらに、独自に作成したAIプロンプトを活用して競合サイトを分析し、自院のホームページに不足している情報や取り入れるべき情報を抽出・反映することで、コンテンツの差別化と執筆効率の向上を図った。
これらの取り組みの結果、短期間で、地域のターゲットキーワード検索において1位を獲得したという。
SEO効果が波及するまでの期間をLPと広告で補完する
SEOによる評価が定着するまでには一定の時間を要するため、開業直後の患者数が少ない時期をどう乗り越えるかが課題となる。同院では、胃カメラ・大腸カメラそれぞれに特化したLP(ランディングページ)を開業当初から2本用意し、リスティング広告を投下することでこの期間を補った。
一般的には、ある程度患者数が増加した段階でLPを追加投入し、さらなる集患を図るクリニックが多い。しかし同院では、患者数が最も少ない開業初期の谷間を埋める起爆剤として、LPと広告を集中的に投入し、その間にSEOの評価が高まるのを待つという時間軸を意識した戦略を採った。
開業立ち上がり期の広告費の目安は月商の5〜10%程度とされる。同院では、初月1,000万円を目標値として掲げていたため、その10%にあたる100万円程度を必要経費として位置づけた。リスティング広告とLPによって一気に損益分岐点を超えたことが、開業初月から黒字化を実現した秘訣と説明した。
予約導線の検証
SEOや広告によってホームページへの流入を確保しても、予約に至る導線が整っていなければ集患効果は限定的である。要は、ウェブサイトの見た目や操作感において、サイトに流入した患者がきちんと予約を完了するまでに至る設計になっているかどうかである。今の時代、患者の大半はスマートフォンで検索・閲覧を行う。デザインをプロの制作会社に任せているから安心だと思いがちだが、石岡先生は、院長自身が自らのスマートフォンで実際に予約操作を行い、患者と同じ体験を確認することが不可欠と強調した。予約ボタンの位置が分かりにくい、目的の情報にたどり着けないといった問題があれば、患者は予約を完了せずに離脱し、他院のサイトへ移行してしまう可能性があるため、必要に応じて適切に改善しなければならないとした。
医療機関側はパソコンでホームページを確認することが多いため、ブラウザのレスポンシブデザインモード(パソコン上でスマートフォン表示を再現できる機能)などを利用し、スマートフォンで閲覧・予約する患者の視点に立ってサイトを確認することを推奨している。
内覧会の実施と周辺医療機関への挨拶回り
開業初期の集患には、WEB施策以外の取り組みも寄与した。第一に、内覧会の実施である。石岡先生自身、内覧会の効果について当初は懐疑的であったというが、実際に1日の内覧会を実施したところ、約30件の内視鏡検査予約が入る結果となった。あわせて、実際のオペレーションやスタッフの動線を事前に確認できたこと、スタッフのモチベーション向上につながったことも副次的な効果として挙げた。なお、通常クリニックはポスティングによるチラシ配布が認められていないが、内覧会の告知に限ってはポスティングが可能であり、これを活用して周知を図ったことが有効であった。その効果は内覧会当日にとどまらず、開業から数カ月が経過した後にチラシを持参して来院した患者もみられたという。
第二に、周辺医療機関への挨拶回りである。内視鏡検査を導入していない近隣の内科医院、関連するクリニック、バリウム検査のみを実施している健診センター等を訪問し、内視鏡検査の開始を直接伝えたという。また、近隣の薬局への挨拶も重視した。薬局は複数診療科の患者が集まる地域のハブとしての機能を持ち、薬剤師と患者との会話の中で医療機関が紹介される機会が生じ得る。薬局経由およびクリニック経由の紹介は開業後も継続的に多数得られているとし、こうした地域の医療機関・薬局との関係構築は、開業初期から行うべき不可欠な取り組みとして位置づけた。
開業初期のスタートダッシュが軌道に乗った後は、広告への依存度を段階的に引き下げていくことが課題となる。そのための中心的な施策として、次の4点を挙げた。このうちMEO対策とコンテンツ制作、ターゲティングは必須の施策であり、SNS戦略やメディア露出は、さらなる展開を見据えた付随的な施策として位置づけた。
セミナーでは同院の直近1カ月間の実績データが示された。内視鏡検査に関する予約は約600件にのぼり、その内訳は以下の通りである。開業初期に広告への依存度が高かった状況から、自然検索が主要な流入経路へと移行している点が注目される。
| 流入経路 | 予約件数 | 構成比(概算) |
| 検索窓経由 | 403件 | 約67% |
| リスティング広告経由 | 186件 | 約31% |
| AI経由 | 14件 | 約2% |
MEOとは、Googleマップ上での検索順位を最適化する対策を指す。石岡先生は、MEOにおいて重要な指標を次の2つに分けて捉える必要があると説明した。
マップ上で最上位に表示されても、流入した患者が2位・3位の医療機関と比較検討した結果、予約に至らなければ、実質的な集患効果は得られない。そのため、上位表示(3位以内)に加えて、実際の予約につながる情報設計が求められる。
具体的な対策としては、正確な診療時間の更新や院内の雰囲気が伝わる写真の掲載といった基本的な情報管理に加え、口コミの獲得が重要な要素として挙げられた。Googleは口コミの件数および評価が高い事業者を優遇する方針を示しており、地道な口コミの蓄積と正確な情報の継続的な更新が、有償の代行サービスに依存するよりも有効な対策であるとの見解が示された。
コンテンツ制作(記事作成)については、かつては記事数を増やすこと自体が重視された時期もあったが、現在のGoogleのアルゴリズムにおいては、情報の鮮度と専門性の深さが重視される傾向にあるという。こうした背景があるにもかかわらず、開院当初に作成した記事が、その後も更新されないまま放置されているケースが非常に多いと指摘した。
同院ではアクセス解析を行い、閲覧数の少ない記事を特定したうえでリライトを実施しており、実際に、対象記事の閲覧数が改善直後に約3倍に増加したというケースもあるという。この際にも独自に構築したAIプロンプトを活用することで、リライト作業自体は数分程度で完了する。
象徴的な事例として「内視鏡検査後の食事に関するコンテンツ」を提示。検査前の食事制限に関する記載はほとんどの医療機関のホームページに存在する一方、検査後の回復食に関する情報は競合サイトの分析上、比較的手薄であることが判明した。そこで石岡先生はこの領域に的を絞ったコンテンツを作成し、結果として全国1位の評価を獲得し、AI検索においても引用される状況に至ったという。あわせて、医療コラムを月5本程度の頻度で継続的に更新しており、これらの取り組みによりサイト全体の流入が倍増した。
また、Googleが従来の検索エンジンから、AIが直接回答を提示する「回答エンジン」へと変化しつつあるとの認識を示し、AIによる引用対象として選定されるサイト設計(AIO:AI最適化)の重要性を強調した。
SNS運用、特にYouTubeについては、短期的な集患効果という観点では投資対効果が見合わないケースが多いとしつつ、集患したい患者層をあらかじめ絞り込める点、また来院前に診療内容を疑似体験した状態で受診する患者が多く、結果的に高いコンバージョン率が得られる点で、SEOやMEOとは一線を画す位置づけにあると説明した。
一方、消化器内科領域は美容医療等と異なり、必要に迫られて受診する性質が強いため、Instagramとの親和性は相対的に低いとの見解が示された。SNS運用を外部業者に一任し、各媒体の特性を理解しないまま費用を投じることについては、効果が乏しいと指摘した。
また、内視鏡検査数の増加という観点では必須ではないものの、中長期的なブランディングや情報発信の観点から、メディア掲載等を通じて、自院のホームページのみでは接点を持てない患者層へアプローチすることには意義があるとした。メディア掲載には、おすすめ記事、ニュース掲載、雑誌掲載、書籍出版などが含まれる。
ターゲティングを誤った結果、開業時に起こりやすい失敗として、次の3点が挙げられた。
複数医師体制の医療機関と、同院のような単独医師(ワンドクター)体制の医療機関とでは、ターゲティングや集患の考え方が大きく異なるという前提がある。ワンドクターの場合、対応可能な診療内容を網羅的にホームページへ掲載することは、自己満足にとどまり、患者から見た訴求点をかえって不明瞭にする。その結果、予約行動にも結びつきにくくなると指摘した。
また近年は、鎮静剤の使用、上部下部消化管検査の同日実施、日帰りポリープ切除、最新機種の導入といった要素は、多くの内視鏡クリニックが標榜しており、これらの設備・体制のみによる差別化は困難になっているという。差別化においては、AI内視鏡など競合の最新設備を後追いで模倣するのではなく、競合が対応しきれていない患者の不満点に着目し、自院の患者層に適した患者体験を提供できているかという視点を重視すべきであると述べた。
【検査の循環を作り、内視鏡検査患者を増やす】
能力の高い医師ほど陥りやすい失敗として挙げたのが、「来院した患者を全て自身で抱え込んでしまうこと」だ。単独医師体制で内視鏡検査数の増加を目指す場合、再診患者によって予約枠が圧迫されると、内視鏡検査を希望する新規患者の予約が確保できなくなる。同院では、一般内科領域については近隣の医療機関に紹介する方針を採っており、また、内視鏡検査終了後は速やかに紹介元へ患者を戻す「逆紹介」の仕組みを運用している。この結果、近隣医療機関にとっては患者を奪う競合ではなく、内視鏡検査のみを担う連携先として機能し、安定的な紹介経路の確保につながっているという。
【枠を「減らして」満足度を上げる】
「再診患者を抱え込まない」ことにより新規患者の予約枠を確保できるだけでなく、診療時間に余裕が生まれることで患者一人当たりの対応時間を確保でき、結果として患者満足度の向上、口コミの増加、MEOおよびSEO評価の向上という好循環につながる。石岡先生は、WEBによる集患とターゲティングは表裏一体の関係にあり、「誰を集め、誰を他院に紹介するか」を明確化することが、集患戦略全体の前提になると総括した。
セミナーでは、実際の同院ホームページの画面を提示しながら、開業当初から現在に至るまでの改善プロセスが解説された。以下、その要点を段階ごとに紹介する。
開業前のSEO対策を加速させた、細分化ページと動画による差別化
開業準備段階では、開業までの時間的制約により幅広い検索需要を取り込む必要があったため、ページ数を細分化した設計にした。またファーストビューには、他院との差別化を意図した動画コンテンツを、制作を担当したヒーローイノベーション社の提案により導入した。この結果、開業当初は他院と比較してページ滞在時間が長くなる傾向がみられ、Googleによる評価の観点からも好意的に作用したため、SEOの評価も短期間で向上した。こうした設計は、開業初期の認知獲得において大きなメリットとなった。
開業初期は認知獲得、成長期は患者目線へ――流入増加に応じてホームページを最適化
開業当初は、まず医療機関としての認知獲得を優先し、医師のプロフィールや対応可能な検査内容を前面に押し出す構成とした。その後、SEO評価の向上に伴い流入数が増加した段階では、患者が求める情報(症状・疾患等)にすぐたどり着けないことによる離脱を防ぐため、当該情報をページ上部へ再配置した。あわせて、内視鏡検査件数の実績を掲載し、専門性および信頼性を訴求する構成へと改めた。
自費診療の成長を捉え、ホームページの導線を最適化
グローバルナビゲーションについても変更を加えた。開業当初は自費診療(人間ドック等)からの流入が少なかったため、グローバルナビゲーションには掲載していなかった。しかし、開業後の運営を通じて人間ドックの比率が増加し、自費診療による売上が開業当初と比較して約10倍に達したことを受け、自費診療のタブを新設した。
コンテンツの質と継続的な発信が、SEO・AI検索からの流入を倍増させる
コンテンツ面では、検査後の回復食に関するページを作成した結果、全国1位の評価を得るとともに、AI検索からの流入も獲得した。また、医療コラムも定期的に執筆し、最低でも月5本を公開するようにしている。これらのコラム記事では、近年、AI検索からの流入が大きく伸びているという。サーチコンソールで確認できる流入数に加え、AI検索からの流入も含めると、サイト全体の流入は倍増している印象である。
本セミナーで示されたのは、単一の施策によって短期的な成果を上げた事例ではない。開業前・開業直後・成長期という各段階でホームページの役割を見極め、設計と改善を重ね続けた結果、ホームページを安定した集患と経営を生み出す「資産」へと育て上げたプロセスである。開業時にホームページへどれだけ本気で投資し、患者に選ばれる仕組みを築けるか――その決断が、開業後の成長を大きく左右する。本セミナーは、ホームページが単なる広告媒体ではなく、クリニックの未来を切り拓く経営基盤であることを如実に示した内容だった。
(本稿は、セミナー「内視鏡検査の超効率化セミナーシリーズ 第2回」における講演内容をもとに編集・構成しました)

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