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お役立ちコラム
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開業を検討している医師にとって、「開業準備はいつから始めればよいのか」は最初に押さえておきたいポイントです。
勤務先を退職するタイミングだけでなく、事業計画の策定や物件探し、資金調達、設計・内装工事、医療機器の導入、行政手続き、スタッフ採用、医師会への入会など、開院までには数多くの準備が必要になります。
一般的なクリニックの新規開業であれば、開院予定日の12〜18か月前から準備を始めると、比較的余裕を持って進めやすいといわれています。ただし、戸建てでの開業や大型医療機器を導入する場合は、さらに長い期間が必要になることもあります。
本記事では、クリニック開業に必要な準備を開院日から逆算し、「いつ・何を進めればよいのか」を時系列で解説するとともに、開業を目指す医師が陥りやすい失敗パターンについても触れていきます。
目次
クリニックを新規開業する場合、準備開始から開院までは12〜18か月程度をひとつの目安として考えます。開業までには、主に以下のような工程があります。
ここで挙げた工程は、それぞれ独立しているわけではありません。物件が決まらなければ具体的な設計を進めにくく、工事が遅れれば医療機器の搬入やスタッフ研修にも影響します。行政手続きに不備があれば、予定していた時期から保険診療を開始できない可能性もあります。
このように工程には連動性があるため、「開院日を決めてから準備を始める」のではなく、必要な工程と所要期間を整理したうえで開院日から逆算することが重要です。実際、開業がずれ込むケースの多くは、単に1つの工程だけが遅れたことが原因ではありません。複数の工程を別々に進めてしまい、工程の1つが遅れることで別工程にも連鎖して影響することを、十分に意識できていなかったケースがほとんどです。
必要な準備期間は、開業形態や診療科によっても変わります。
一般的なテナント開業であれば12〜18か月程度がひとつの目安ですが、戸建てや土地活用による開業では、土地探しや建築設計、建築確認、工事などに時間がかかるため、18〜24か月以上必要になるケースもあります。
また、眼科や耳鼻咽喉科、整形外科、透析など、大型・専門機器や特殊な設備を必要とする診療科では、機器の納期や電源・給排水などの工事も考慮しなければなりません。
一方、既存の医療機関を引き継ぐ承継開業では、建物や設備、患者基盤などを活用できるため、準備期間を短縮できる場合があります。ただし、既存設備の状態やスタッフの雇用条件、契約関係、過去の経営状況などの確認が必要であり、承継だからといって必ず短期間・低コストで開業できるとは限りません。

開院18〜12か月前は、「どのようなクリニックをつくるのか」という開業の土台を固める時期です。物件や医療機器を先に決めるのではなく、まずは診療方針、ターゲットとなる患者層、診療内容、診療時間、必要なスタッフ数、法人形態などを整理します。
最初に考えたいのが、クリニックの経営理念と診療コンセプトです。「地域のかかりつけ医として幅広い症状に対応する」のか、「専門的な検査・治療を強みにする」のかによって、適した立地や必要な設備、スタッフ構成は変わります。
勤務医として培った専門性を生かすことはもちろん重要ですが、開業後は経営者として地域の医療ニーズも考えなければなりません。ご自身が提供したい医療と、地域で求められている医療の両方を踏まえてコンセプトを考えましょう。

この段階で、個人開業と医療法人設立のどちらを選ぶかも検討しておくと、その後の税務・資金計画がスムーズになります。医療法人は社会保険料の負担方式や所得税・法人税の扱い、事業承継のしやすさなどの点で個人開業と異なります。開業当初から法人化するケースもあれば、事業が軌道に乗った段階で法人化するケースもあり、どちらが適しているかは収益規模や将来設計によって異なります。早い段階で税理士に相談しておくとよいでしょう。
コンセプトと並行して、候補エリアの診療圏を調査します。確認したいのは、周辺人口や年齢構成だけではありません。駅からの距離や交通手段、昼間人口と夜間人口、住宅開発の予定、競合する医療機関の診療内容・診療時間なども確認します。
たとえば、小児科であれば子育て世帯の多さ、整形外科であれば高齢者人口や通院手段など、診療科によって重視すべき条件は異なります。データだけで判断せず、候補地を実際に訪れ、時間帯による人の流れや周辺環境を確認することも大切です。
開業コンセプトが固まったら、事業計画書を作成します。診療内容や診療圏、競合状況に加えて、想定患者数、診療単価、売上、人件費、賃料、医療機器費などを具体的に落とし込みます。
特に患者数は、順調に増えたケースだけでなく、想定を下回ったケースも試算しておくことが重要です。楽観的な数値だけで計画を立てると、開院後に資金繰りが行き詰まる典型的な失敗パターンに陥りやすくなります。
開業時には、物件取得費、設計・内装工事費、医療機器費、電子カルテなどのIT関連費、採用費、広告費、医師賠償責任保険料など、多額の初期費用が発生します。さらに、開院直後から売上が安定するとは限りません。開業資金だけでなく、一定期間(目安として3〜6か月程度)の運転資金も含めて資金計画を立てましょう。
開院12〜10か月前になったら、候補エリアから具体的な物件へ絞り込みます。同時に、金融機関への融資相談も本格化させます。
物件が決まらなければ設計を具体化できません。一方で、融資の見通しが立たないまま物件を契約すると、資金計画に無理が生じる可能性があります。そのため、物件選定と資金調達は並行して進めることがポイントです。
クリニックの物件選びでは、賃料や駅からの距離だけでなく、医療機関として使用できる条件が整っているかを確認します。具体的には、以下のような点です。
契約してから問題が判明すると、追加工事や計画変更が必要になることがあります。物件契約前には設計・施工会社などにも確認を依頼し、必要に応じて管轄の行政機関へ相談しましょう。賃貸借契約書は、内容を十分に確認せずに契約してしまうトラブルが起きやすい書類のひとつです。契約前に弁護士や開業支援の専門家によるチェックを受けることをおすすめします。
金融機関への融資相談では、事業計画書のほか、見積書、自己資金を確認できる資料、職務経歴、収支予測、返済計画などを準備します。
重要なのは、「医師だから融資を受けられる」と考えないことです。金融機関は、開業後にどの程度の患者数・売上が見込めるのか、投資額が適切なのか、借入金を継続して返済できるのかを確認します。
また、自己資金を開業費用に使い切るのも避けたいところです。予想外の追加工事や開院後の売上低迷に備え、医院の運転資金や生活資金にも余裕を持たせましょう。
物件と資金調達の方向性が固まったら、クリニックの設計・内装、医療機器の選定を進めます。この時期には、管轄の保健所へも一度事前相談を行い、施設基準に照らして設計内容に問題がないかを確認しておくと、後の工程での手戻りを防げます。
設計では、見た目だけでなく、患者動線とスタッフ動線、診療効率、安全性、将来的な拡張性を考えることが重要です。受付から待合、診察、検査、会計まで患者が迷わず移動できるか、スタッフが無駄なく動けるかを確認します。
また、車いすやベビーカーへの対応、プライバシー、感染対策、収納スペース、スタッフ休憩室、廃棄物の保管場所なども検討が必要です。
医療機器は内装工事が終わってから選ぶのではなく、設計と並行して検討します。大型機器の場合、床の耐荷重や電源容量、空調、給排水、搬入経路などが内装設計に影響するためです。
また、本体価格だけで判断するのではなく、設置費、消耗品、保守契約、修理対応、更新費用などを含めた総コストで比較しましょう。高額な機器であっても、想定患者数に対して稼働率が低ければ、開業後の資金繰りを圧迫します。「勤務医時代に使い慣れていたから」という理由だけで高額機器を導入し、稼働率が上がらず負担になるケースは少なくありません。購入・リース・レンタルの違いも含め、事業計画との整合性を確認することが大切です。
開院7〜4か月前には、電子カルテ、予約システム、Web問診、レセコン、会計システムなどを選定します。
重要なのは、個々の機能だけでなく、受付から診察、検査、会計、レセプト請求までの業務がスムーズにつながるかという視点です。システム間で連携できない場合、二重入力が必要になったり、転記ミスが発生したりする可能性があります。
導入前には、実際の診療フローを想定し、予約枠、問診内容、カルテ入力、検査結果、会計までを確認しましょう。通信障害や停電時のバックアップ、アクセス権限、個人情報の管理方法なども重要な確認項目です。
開院6〜3か月前には、保健所や地方厚生局への手続きに加え、スタッフを雇用するための労務関連の手続きも並行して進めます。必要な手続きや提出期限は、開設者、所在地、診療科、設備、法人・個人の違いなどによって異なるため、管轄機関への事前確認が重要です。
診療所を開設する際は、所在地を管轄する保健所へ、施設基準や必要設備を踏まえた開設に関する手続きを行います。設計段階で一度相談していても、竣工後にあらためて確認が必要になるため、工事スケジュールと手続きのタイミングを合わせておきましょう。エックス線装置などを導入する場合には、設備に応じた追加の手続きが必要になることがあります。
保険診療を行う場合には、管轄の地方厚生局への保険医療機関指定申請が必要です。申請の締切や必要書類は、地域や希望する指定開始日などによって異なります。手続きが遅れれば、予定していた開院日から保険診療を開始できない可能性もあるため、早い段階で管轄の地方厚生局へ確認しましょう。
スタッフを雇用する場合、労働基準監督署やハローワークへの労働保険(労災保険・雇用保険)の適用手続き、年金事務所への社会保険(健康保険・厚生年金)の適用手続きが必要になります。常時10人以上のスタッフを雇用する場合は、就業規則の作成・届出も必要です。開業準備は診療体制の整備に意識が向きがちですが、労務まわりの手続きが漏れると、開院後のスタッフ管理でトラブルの原因になります。社会保険労務士に早めに相談しておくと安心です。
地域によって手続きや審査にかかる期間は異なりますが、地区医師会への入会も、この時期から動き出しておきたい項目です。医師会は、地域の紹介患者ネットワークや休日夜間診療の輪番、乳幼児健診・特定健診・予防接種といった行政委託事業への参加窓口にもなります。入会には推薦人が必要な地域もあるため、開院直前になって慌てないよう、早めに窓口へ相談しておきましょう。
行政手続きは「開院直前にまとめて行うもの」ではありません。設計、工事、採用、法人関係の手続きなどと連動させて管理することが重要です。
スタッフ採用は、開院3〜5か月前をひとつの目安として開始します。ただし、看護師など採用競争が激しい職種や地域では、さらに早く募集を始めたほうがよい場合もあります。
採用人数は、「何人いれば診療できるか」だけで考えないことが重要です。受付、電話、会計、診療補助、検査、レセプトなど、時間帯ごとの業務量を想定し、必要な人数を決めます。一方、開院当初から人員を増やしすぎると、人件費が固定費として経営を圧迫します。常勤・非常勤の組み合わせや、患者数の増加に合わせた増員も検討しましょう。
スタッフがそろったら、接遇だけでなく、受付、予約、問診、診察補助、検査、会計、レセプト、個人情報管理、感染対策などの研修を行います。
電子カルテや予約システムは、説明を聞くだけでは不十分です。模擬患者を設定し、「予約→受付→問診→診察→検査→会計」まで一連の流れを実際に動かしてみましょう。開院前には院長とスタッフ、必要に応じてシステム業者なども参加し、総合リハーサルを行うと安心です。
開院3か月前ごろからは、地域の患者にクリニックを知ってもらうための広報を本格化します。ホームページ、Googleビジネスプロフィール、看板、チラシ、内覧会など、ターゲットとなる患者層や商圏に合わせて施策を選びます。
ホームページでは、医院名や診療時間、アクセスといった基本情報だけでなく、「どのような症状を診てもらえるのか」「どのような診療に力を入れているのか」を患者目線で伝えることが重要です。スマートフォンから閲覧する患者が多いことを想定し、予約方法やアクセス、診療内容へ迷わず到達できる構成にしましょう。
なお、ホームページや看板、チラシ、Web広告などを制作する際には、医療広告に関する規制への配慮が必要です。治療効果を保証するような表現や誤認を招く表現を避け、公開前に内容を確認しましょう。
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内覧会を実施する場合は、工事や清掃が完了し、院内を安全に案内できる状態になってから開催します。開院2〜4週間前程度をひとつの目安とし、設備やシステムの基本的な動作確認も済ませておきましょう。
地域住民だけでなく、近隣の医療機関や薬局、訪問看護ステーション、介護施設などに医院の診療内容を知ってもらう機会として活用することもできます。
開院が近づくほど、工事業者、医療機器メーカー、システム会社、スタッフ、行政機関などとの調整が集中します。複数の工程を個別に管理すると抜け漏れが生じやすいため、全体の工程表を作成して進捗を一元管理しましょう。
開院直前には、少なくとも次の項目を確認します。
特に重要なのは、開院日を守ることだけを優先しないことです。患者の安全や診療体制が十分に整っていない状態で無理に開院すれば、開院後のトラブルにつながりかねません。
工事や医療機器の納期、採用などには不確定要素もあるため、当初から1〜2か月程度の予備期間を想定してスケジュールを組むとよいでしょう。
これまでの内容を踏まえ、開業準備でとくに陥りやすい失敗を整理します。
いずれも、個別の工程だけを見ていては気づきにくく、開院日からの逆算スケジュールの中で複数の専門家(税理士、社会保険労務士、設計・施工会社、金融機関など)と情報を共有しながら進めることで防ぎやすくなります。
クリニック開業は、開院日を迎えれば終わりではありません。むしろ、経営者としての本格的なスタートは開院後です。
開院後は、患者数や売上だけでなく、再診率、キャンセル率、診療単価、人件費、材料費、広告費、資金残高などを定期的に確認し、事業計画との差を把握します。患者数が想定を下回っている場合も、単純に広告費を増やすのではなく、認知度、診療時間、予約の取りやすさ、診療内容、患者層などに分けて原因を考えることが重要です。
また、患者からの意見やスタッフとの面談を通じて、待ち時間、院内動線、説明方法、予約方法などを改善していく必要があります。開業準備の段階から「開院後にどの数字を確認し、どのように改善するか」まで決めておくと、経営状況を把握しやすくなります。

一般的なクリニックの新規開業では、開院予定日の12〜18か月前から準備を始めることがひとつの目安です。戸建て開業や土地活用、大型医療機器を必要とする診療科では、さらに早い時期から準備が必要になることがあります。
開業準備で重要なのは、物件、融資、設計、医療機器、行政手続き、労務、医師会入会、集患などを別々に考えないことです。それぞれの工程は相互に影響するため、開院日から逆算した一つのスケジュールとして管理する必要があります。
また、院長がすべてを一人で抱える必要はありません。金融機関、設計・施工会社、税理士、社会保険労務士、開業支援会社など、必要に応じて専門家の力を活用することも選択肢です。
一方で、診療方針や患者に提供したい価値、投資の優先順位など、医院経営の根幹に関わる部分は院長自身が判断する必要があります。「いつ開業するか」だけでなく、「どのような医院をつくり、開院後どのように安定した経営につなげるか」まで見据えて準備することが、開業を成功に近づける重要なポイントです。

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